night and sundial

じゃわじゃわ日記 -the 5th defection-

10/9(水)羽黒山

 翌朝、「エスモールバスターミナル」から、7時50分の路線バス、「羽黒山頂」行きに乗った。市街地を出ると、温泉施設に立ち寄ったりしながら、水田が広がる中をまっすぐ進む。大鳥居が現れると、だんだんと山中の宿坊集落の雰囲気が出てきた。

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 帰路のバスから撮った大鳥居。

 羽黒山は、それほど高い山ではないが、昔の修験道の山で、国宝の五重塔が有名だ。路線バスには、フランス語を話す夫婦なども乗っていた。「羽黒随神門」という停留所で降りると、目の前に赤い山門がある。

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 山門を入ると参道が下っていくのが、珍しい。

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 神々を祀る社が立ち並ぶ。日本のこのような信仰の山によくあることだが、神仏習合の独特の信仰の場だったのが、明治の廃仏毀釈のため、神社を名乗ることになり、出羽神社という名前になっている。そもそも神社なのに五重塔があるというのはそういうことで、正直なところ、その信仰の内容は、あまり理解できないが…

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 滝のすぐ近くまで行くことができる。だが、前夜は雨だったので、間違っても岩に滑ったりしないよう、山歩きは注意しなければならない

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 随神門から10分ほど歩くと、参道の左手の森の中に、五重塔が現れた。

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 室町時代に創建されたものだという。特別拝観を実施中で、一層目の中に入れるのと、二層の外側から中を覗いて見ることができる。創建当時の心柱が通っているが、江戸時代に一層部分は切り取られているという。

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 屋根はこけら葺き。木肌はいかにも風雨にさらされたように見えるので、もとは彩色されていたのだろう…などと思いかけたが、そうではなく、最初から白木の塔だったという。森の中の、谷間のようなところに建っているので、湿気で、カビの類が大変なのだそうだ。

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 五重塔を横目に、森閑とした参道は続く。この参道は、羽黒山の山頂にある出羽三山神社の三神合祭殿まで続いている。先ほどの随神門からさらに車道は続いていて、山頂まで路線バスが通じているが、ここは歩いて登ってみようと思っていた。だが…

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 これは厳しい! ほぼずっとこの調子で登りが続くのだ。

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 芭蕉塚。

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 この森の中にも、昔は僧坊が建ち並んでいたというのだ。

 参道の途中から右手に逸れて、「南谷」という標識が出ていたので、行ってみた。羽黒山を訪れた松尾芭蕉は、「南谷の別院に宿す」と記している。

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 前夜の雨のぬかるみに足を取られ、沢の流れに靴を洗って、たどり着いたのは、山中に開けた、草生した平地だった。

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 池は心字池だという。僧坊と庭園があったということだが、今となっては何一つ残っておらず、山に飲み込まれようとしているのだった。

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 崩れ落ちそうだが…

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 山頂にたどり着いた。汗をかいた身体に、風が冷える。

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 出羽三山神社の三神合祭殿。合祭殿の隣の建物では、秘仏の公開が行われていた。右から、月山阿弥陀如来湯殿山大日如来羽黒山観音菩薩

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 こんなに重厚な屋根の鐘楼は、初めて見る。

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 芭蕉さん。芭蕉さんが訪れた当時の羽黒山は、天台宗の寺院ということになっていたはずだが。

 帰りのバスまで時間があったので、「出羽三山歴史博物館」も瞥見した。神事の映像で流れる、うさぎの被り物をした人物とか、烏天狗のように飛び跳ねるような人物などは、珍しい習俗だ、ということ以上の価値がわからないのだけれど…。平安時代鎌倉時代の、花鳥紋の銅鏡(和鏡)がいくつも並んでいたのが目を引いた。直径10cmほどのものばかりで、合祭殿の前の池(「鏡池」)から出土するのだそうだ。奉納する風習があったらしい。

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 山頂の駐車場。赤いのが庄内交通の路線バス。──10時55分の路線バスで下山して、11時45分に鶴岡駅前に戻ってきた。まだお昼前である。

10/8(火)鶴岡へ

 実は夏休みである。いろいろ考えていたが、東北地方の日本海側でかねてから行きたかったところを廻ることにして、火曜日の午後、ひとまず上野駅に来た。宿泊先は、まあ当日でもなんとかなるだろう。──羽黒山五重塔、象潟の奇観、白神山地に抱かれた十二湖、などなどが思い浮かぶ。上野駅みどりの窓口で、「東京都区内ー大宮(経由:新幹線・新潟・白新・羽越・奥羽・新青森・新幹線)」という、東北一周の経路の乗車券を買った。一緒に、新潟乗継ぎで鶴岡までの特急券も買う。

 新潟までは上越新幹線でわりと簡単に行けるが、その先の、羽越本線の特急『いなほ』は、2時間に1本程度のはずなので、さすがに時刻表を確認しなければならない。上野駅から14時46分、『とき325号』の自由席に、適当に乗り込んだ。平日の午後の上越新幹線で座れないとは思っていなかったが、案の定、空席だらけだった。──駅弁を食べ終わって、上越の車窓を眺める。赤城山が裾野を広げている。

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 国境のトンネルを抜けて新潟県内に入ると、雨であった。──16時47分に新潟に着いた。新潟駅の新幹線ホームは、隣の同じ高さのところに在来線のホームができて、新幹線と特急『いなほ』が同じホームで乗り換えられるようになっている。だが新幹線と在来線なので、間に改札は設けられている、というのが、便利なのかそうでもないのか、微妙なところである。『いなほ』の自由席も空いていた。

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 17時15分発の酒田行き、特急『いなほ9号』である。先ほどの新幹線ではE2系の座席の狭苦しさを感じていたが、この特急はわりと新しい車両で、ゆったりしていた。

 発車するとすぐに、外は暗くなってしまった。海沿いの風景など、もう見られない。まあそうだろうなとは思っていたが、日の短い季節に旅行していることを改めて思った。

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 村上の先には、直流電化と交流電化の境界、デッドセクションがあり、車内がしばらく暗くなる。

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 19時04分に鶴岡に着いて、駅に近いホテルに投宿した。予定のない旅行の一泊目は比較的よいホテルに泊まることにしている。風は強くて肌寒いが、雨は上がっていたので、ぶらぶらと出て、がらんとした駅前の通りで寿司屋を見つけて、適当にカウンター席で飲んだ。ホテルに戻ろうと歩き出したところ、急に激しい風雨が吹き荒れて、ずぶ濡れになってしまった。

「オランジュリー美術館コレクション」@横浜美術館 10/7

 月曜日に開館している美術館と言えばここだ。いまは、パリのオランジュリー美術館からいろいろ来る展覧会が、始まったところだ。

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横浜美術館オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち

 目玉はルノワール、『ピアノを弾く少女たち』だ。この絵、意外に、背景もピアノも、塗り残されているような茫洋とした感じで、同じピアノを弾く女性たちの絵としては、もう一枚の『ピアノを弾くイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロル』のほうがしっかり描き込まれている。女の子の表情もあまりうまく描けているとは思えない。だがその茫洋さが、揺らめくような、まぶしくて見えないような(?)、そういう世界になってしまっているのがすごい。

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 (写真は過去にオランジュリー美術館で撮ったもの)

 ルノワールで、よかったのは、『花束』という小さな絵。暗めの青い背景の前に、緑の円い花瓶に活けられて、赤いポピーのような花が、浮き上がって見えるようだった。

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 シスレーとモネ。(同上)

 リアルに描こうとしてどうもおかしくなっちゃうアンリ・ルソーさんは、相変わらず(笑)。マティスの絵もいくつかあったが、マティスにしてはわりと色彩が控えめなものが中心だったと思う。──ピカソの絵は、新古典主義時代の作品が目を引いた。がっしりとした、異様なほどの量感を持った女性の姿は、何かの神像のようだし、またそれを大きなサイズで描くから余計に何か神々しい。

 アンドレ・ドランという画家がとても気になった。美しくない裸の皮膚のしわ、たるみや影を描くが、透明な少女の瞳や、みずみずしい葡萄の粒、黒い闇に浮かぶ花束の絵など…、何か透徹した視覚を感じる。

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 だが、この、全然楽しくなさそうなアルルカンとピエロの絵は、よくわからない(同上)

 シャイム・スーティンという画家にも魅かれた。赤や黄色の絵の具を塗りたくって肉塊を描く。人物は細長く極端にデフォルメされている。こうなるとベーコンまであと一歩である(?)。風景を描けば曲がりくねっている。だが家はまっすぐに描いているので、ちゃんと戦略的に描いているのだとわかる。

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 そのあと、横浜美術館はコレクション展も一巡した。
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 藤田嗣治の猫

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 長谷川潔の銅版画。

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 マティス『顔をかたむけたナディア』

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 篠原有司男『ラブリー・ラブリー・アメリカ(ドリンク・モア)』

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 郷土資料的な意味もあるのか、開港当時の横浜の絵図がいくつも。このあたり、旧居留地と元町、いま高速道路と根岸線の高架が覆いかぶさってるあたりだなあ。

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 この夕景の光の描き方がいいよね

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 川瀬巴水の『東京二十景 芝増上寺』。これすごく好きです。木版画なので、たしか町田の美術館でも目にしたことがありますが

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 樋口五葉『髪梳ける女』。これは先日の町田でも見たし、ここも所蔵しているのね。

「美人画の時代」@町田市立国際版画美術館 10/5

 町田市立国際版画美術館の企画展。行ってみたら無料入館の日だった(そんな日があるとは知らなかった)。そのせいか、ここにしてはわりと混んでいた。

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町田市立国際版画美術館美人画の時代―春信から歌麿、そして清方へ―

 展示作品は、キャプションの所蔵元を見るとかなり様々なところから借りてきたようで、わりと自前の所蔵品で展覧会をやりがちなこの美術館にしては珍しい気がする。ぼくは浮世絵などは、美術品としてというよりも、江戸時代の人たちの様子を見るのが面白いなあ…などと思いながら見ているのだけれど。──近代になって、鏑木清方伊東深水の描く女性は、スッとしていてちょっと好みかも、などと思う。媚びてる感じがないのがいい。

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 このパネルのモチーフは、喜多川歌麿の肉筆画、『納涼美人図』。千葉市美術館の所蔵だそうだ。

読書&査収音源リスト(2019年6月~9月)

▽夜は千の目を持つ(創元推理文庫)/ウィリアム・アイリッシュ、村上博基(訳)
夜は千の目を持つ【新版】 (創元推理文庫)
 これは、推理小説というよりは、文章で読むフィルム・ノワールなんだね。1945年のニューヨークではすでに24時間レストランで男女が気怠く語らっていた、って、ある意味で圧倒的な文化格差。

▽ジャガイモの世界史 歴史を動かした「貧者のパン」(中公新書)/伊藤章治
ジャガイモの世界史―歴史を動かした「貧者のパン」 (中公新書)

▽ヒトラーの側近たち(ちくま新書)/大澤武男
ヒトラーの側近たち (ちくま新書)

▽「地図感覚」から都市を読み解く 新しい地図の読み方/今和泉隆行
「地図感覚」から都市を読み解く: 新しい地図の読み方

▼ふしぎな鉄道路線 「戦争」と「地形」で解きほぐす(NHK出版新書)/竹内正浩
ふしぎな鉄道路線: 「戦争」と「地形」で解きほぐす (NHK出版新書)

▼昭和16年夏の敗戦(中公文庫)/猪瀬直樹
昭和16年夏の敗戦 (中公文庫)
 開戦に向けての石油の需給予測の雑さには唖然とする。

▼旅がなければ死んでいた/坂田ミギー
旅がなければ死んでいた
 夏の旅行中に新幹線の中で読んでいた。まあ面白かったんですけど、…結末にがっかりですよ(?)

▼独ソ戦 絶滅戦争の惨禍(岩波新書)/大木毅
独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)
 国防軍善玉説なんてすでに時代遅れなのね。

▼古代日中関係史 倭の五王から遣唐使以降まで(中公新書)/河上麻由子
古代日中関係史-倭の五王から遣唐使以降まで (中公新書 2533)

◆うたかたの記/森鷗外
うたかたの記
 青空文庫でなんとなく読んだが、とにかく美文に感心した。評価の分かれる(?)『舞姫』よりも、こちらを教科書に載せたほうがいいのでは、などと思った。

「狂人にして見まほしき人の、狂人ならぬを見る、その悲しさ。狂人にならでもよき国王は、狂人になりぬと聞く、それも悲し。悲しきことのみ多ければ、昼は蝉と共に泣き、夜は蛙と共に泣けど、あはれといふ人もなし。おん身のみは情なくあざみ笑ひ玉はじとおもへば、心のゆくままに語るを咎め玉ふな。ああ、かういふも狂気か。」
かくいひつつ被りし帽を脱棄てて、こなたへふり向きたる顔は、大理石脈に熱血跳る如くにて、風に吹かるる金髪は、首打振りて長く嘶ゆる駿馬の鬣に似たりけり。「けふなり。けふなり。きのふありて何かせむ。あすも、あさても空しき名のみ、あだなる声のみ。」

▼HELLO WORLD(集英社文庫)/野崎まど
HELLO WORLD (集英社文庫)

▼方丈記(光文社古典新訳文庫)/鴨長明
方丈記 (光文社古典新訳文庫)

又いきおひある物は貪欲ふかく、独身なる物は人に軽めらる。財あればおそれおほく、貧ければうらみ切也。(略)世にしたがへば身くるし。したがはねば狂せるににたり。

▼おくのほそ道 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典(角川ソフィア文庫)
おくのほそ道(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)
 初めて通読した。「かさね」のほほえましさとか、いちいち古人をしのんで感動しちゃう芭蕉さんとか、夏の東北の風景が思い浮かばれたりするあたり、気持ちよく読み進めていたが、どうにもひっかかったのは、終盤の、市振のエピソードだった。『おくのほそ道』の全体から見ても異色と言ってもよい一節で、どことなく、旅を続ける忌まわしさ、のようなものすら感じる。また、「佐渡に横たふ…」のあとにこれが置かれていることも、大きな幽界と小さな幽界の対比のようにも思えた。
 『おくのほそ道』の解説書は数あろうが、この本は、解説文の独善・断定調が、若干鼻につく。

▼立華高校マーチングバンドへようこそ 前編・後編(宝島社文庫)/武田綾乃
響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ 前編 (宝島社文庫) 響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ 後編 (宝島社文庫)

▼響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編・後編(宝島社文庫)/武田綾乃
響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 前編 (宝島社文庫) 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 後編 (宝島社文庫)
 追い続けていたこの物語もいよいよ最終章。何度か読み返していた。もはや畸形的な進化を遂げてしまった吹奏楽部に、唐突に現れてあくまでニュートラルに振舞う新キャラ、三年生の転校生・黒江真由。この真由というキャラ、吹奏楽部が進化する中で久美子が置き忘れてきたもの(あえて棄ててきたもの、と言ってもいい)を体現しているような存在で、それに久美子がどう立ち向かうかのお話…とも解釈できるのが面白い。だが、最後に、真由が何を考えてどう行動したのかは、語られないんだよね。なぜなら、これは久美子の物語だから。進化しながらすべてを手に入れる主人公、久美子の物語だから…。でも、語られないそのあたりを考えていくと、想像がふくらむ。──久石奏には惨敗しててほしい(笑/インターネットミーム)。

 ユーフォシリーズについてこれまであまり語れなかったのは、この作品に感じることを語ることはぼくの場合すなわち自分語りになってしまうから。環境は違っても、中高や大学で音楽系部活をやっていた人は、きっと、すべての登場人物の思いのかけらが、なにかしら自分の中にもあったと感じられるのではないだろうか。ぼくにとっては、そういう意味でものすごく引っかかりがあり、だからこそものすごく惹かれる作品だった。最終楽章のアニメーション化を、何年かかっても、待っている。

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▼エイミー/茅原実里
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』ED主題歌「エイミー」

▼宇宙の記憶/坂本真綾
宇宙の記憶

▼METANOIA/水樹奈々
METANOIA(TVアニメ「戦姫絶唱シンフォギアXV」OPテーマ)

▼REBELLION/水樹奈々
REBELLION

▼Answer/矢野沙織
Answer

9/20(金)東京国立博物館と野外シネマ

 東京国立博物館へ向かう。金曜は夜間開館の日だ。
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 企画展の期間ではないけれど、ここは常設展だけでも見ごたえがありすぎるし、来るたびに展示に変化がある。そろそろここの年パスを買った方がいいのではないか…。

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 琉球王朝時代の螺鈿! 以前、サントリー美術館の展示で初めて目にして驚いた、こういう螺鈿の大盆、東京国立博物館にもあるのね。なかなか目にする機会がないものだと思う。

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 俵屋宗達の扇面散屏風。当時の“瀟洒なデザイン”だったのだろうなあ

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 長谷川雪旦『月に秋草図』。

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 浮世絵のコーナーは、見に来ると毎度違うものが展示されている。これは『品川君姿八景・入船乃夕照』。

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 薬師寺聖観音菩薩の模造だそうだ。端正でよいプロポーション

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 飛鳥時代の菩薩立像。身体がだいぶ薄いので、本当にもともと立像だったのかな…と思う。今となってはどことなく異形である。

 東洋館に入ると、ちょっとすごい石仏に目を奪われた。

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 光背までびっしりと彫刻で埋めつくされている。驚きすぎて、これがどの時代のどこの像なのかメモするのを忘れた。

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 13~14世紀イランの花鳥紋と、ラスター彩の陶器。金彩がきれい。

 中国絵画のコーナーには、扇面美人図の数々。

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 明代の、螺鈿の花鳥。

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 蒟醤(キンマ)と呼ばれるタイの漆器
 
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 怪獣の類が描かれているようだが、細密さに驚く。漆を塗り重ねたのちに紋様を刻みつけて、そこに別の色漆を入れる、という技法だそうだ。

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 この日の東京国立博物館は、いつもの金曜夜間開館よりも遅い、22時までの開館だ。近年、年に一度開かれている、『博物館で野外シネマ』というイヴェントの日で、本館にはスクリーンがかけられ、パイプ椅子の客席が前庭に作られている。今年はこの金曜日と翌土曜日が、野外シネマの日で、なんとなく土曜日に見に来ようかなと思ってはいたが、ぼくはこの日、博物館に来るまで、金曜日もやっていることを忘れていた。

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 いい具合の、気持ちよい風が吹いていて、出店のインディアペールエールを飲みながら、後ろの方に座った。──今年の映画は、『この世界の片隅に』。この映画、ぼくは実は、見たことがなかったのだよね…。ちょっと疲れていたので、途中で帰ってもいいかな、と思いながら見始めたけれど、見始めたらもう、席を立つことなんかできなかった。あの、国立博物館の前庭に、おそらく千人くらいの観客がいたと思うのだけど、完全な静寂が訪れた瞬間があったのが、印象的だった。

「伊庭靖子展 まなざしのあわい」@東京都美術館 9/20

 東京都美術館の地下ギャラリーへ。非常に空いていて、気持ちが落ち着いた。

東京都美術館>伊庭靖子展 まなざしのあわい

 写真をもとにして描かれているらしい油彩が中心。細密な写実絵画の数々…。クッションの布地や刺繍の質感が非常にリアルに伝わる。つるんとした陶器や布地の柔らかい質感が、近くに寄って見ると意外にマットに描かれているのも不思議だ。そして、その「非常にリアル」であることから、浮かび上がってくる何かがたしかにある。

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 つるんとした陶器やガラス器を描いたシリーズは、一部撮影可。これはなんだろう、と思いながら眺めているうちに、ああ透明な板や水槽のようなものを通した図像なのか、と気付いたが、いくつものレイヤが重なり合って溶け合うようだ。──最後の方の、荒い粒子のような版画もよかったけど、立体視の映像は、ぼくは何も見えませんでした…。10/9(水)まで。「コートールド美術館展」の半券で300円引きになる。

コートールド美術館展 @東京都美術館 9/20

 東京都美術館は、この日は正面入口で手荷物検査を実施していた。最近、都立の美術館でときどき抜き打ち的にやっている印象があるが、どういう方向に持っていきたいのだろうか。

東京都美術館コートールド美術館展 魅惑の印象派

 コートールド美術館(The Courtauld Gallery)とは、ロンドンにあるギャラリーで、戦前に人絹で財を成した実業家が、ロンドン大学に寄付した美術カレッジのコレクションだそうだ。時代的にはまだ印象派後期印象派もつい一世代程度前でしかなく、評価が定まっていない頃でもあったようだが、今となってはたしかな審美眼と言わざるを得ず、…いろんな人がいるものだ。

 展示会場に入るとまず最初に、ホイッスラーの『少女と桜』、薄衣に赤い頭巾の顔の見えない女の子が鉢植えの桜をいじっている、不思議ときれいな絵が出迎える。しかし、これは何かの絵の部分なのではないかな…見切れているよくわからない円いものや、手前に雑に置かれた布など…、と思って調べてみたら、登場人物が三人になった絵がテートにあるようだ。

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 ポスターにもなっている目玉は、マネの『フォリー=ベルジェールのバー』で、バーカウンターの向こう(という設定らしい)に虚ろな目をした美しい女性が立っている絵である。後ろの大きな鏡に映って大規模な酒場の雰囲気が伝わってくるけれど、女の人の冷たい視線は、ちょっと、空恐ろしい。

 セザンヌの『アヌシー湖』、とても美しい。これはいいセザンヌじゃないの…。
Lac d'Annecy, par Paul Cézanne
(public domain via Wikimedia Commons)

 鏡のような湖面と山並み、セザンヌ自身もちょっと含羞があったらしく、「若い女性のアルバムのようだ」なんてことを言っていたというキャプションがあったが…、しかし、青と緑が響きあっているようで、でも静けさが感じられる、見事に調和したすばらしい絵だ。

 ルノワール、『桟敷席』は、つるりとした青白い顔色とさえない表情が、どうにも不健康で、うーん、と思っていたのだけど…

Renoir - Outskirts of Pont-Aven, 1888-90
(public domain via Wikimedia Commons)

 茫洋とした風景画が特によかった。『春、シャトゥー』や、『ポン=タヴェンの郊外』など、ぱっと見たときに揺らめいたように見えたのだ。まさに夢の中のようで、不思議な絵だ。

 そのほか、アンリ・ルソーの絵(『税関』)のバランスがおかしくて、こりゃずいぶん高い木だな…さすがルソーさん(^^;…と思ったら、その隣のシスレーの絵(『雪、ルーヴシエンヌにて』)もなかなかバランスが不釣り合いで、あれれ、と思ったり。ゴーギャンタヒチの裸婦の絵なんかもなんとなく凄味のある絵だし。モディリアーニの裸婦の絵も。モネの『草上の昼食』は、えっあれはオルセー美術館にあるのでは?と思ったらこちらは習作だそうで、塗りが荒っぽい。ロダンドガのブロンズ作品もいくつかあった。…えっ、ニジンスキー?!

 …などなど、大いに堪能した。比較的空いているであろう平日の夕方に来られてよかった。

「円山応挙から近代京都画壇へ」@東京藝術大学大学美術館 9/20

 この日はいくつかはしごするつもりで、金曜日の午後に上野に現れた。まずは芸大美術館へ。

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東京藝術大学大学美術館円山応挙から近代京都画壇へ

 障壁画や屏風の大作が並ぶ、出色の展示だった。まず応挙の『松に孔雀図』。かっちりとした構成と鋭い線が魅力的だし、金地に墨の黒のみで描かれているのに不思議と松の葉が青く見える。ふわふわもやもやとした線で山の稜線をあらわした呉春の『群山露頂図』にも感心する。これらは兵庫県の香住にある大乗寺という寺に残されているものだそうだ。そんなところによくこんなにきれいに残っているな、と驚くし、まだまだ知らないことがあるなあ。

 応挙の『保津川図』は、適度に様式化されたような水流と、写実的な岩や松が、画面の中で絡み合う。これはまぎれもなく大作だ…と見入った。──足立美術館の所蔵という竹内栖鳳の『雨霽』は、やわらかな金地の背景に、激しい葉末の筆づかい、木の幹のたらしこみなど、まさに総動員という感じ。他の美術館などでこれがただ置いてあっても自分はあまりピンとこなかっただろうと思うのだが、この日は不思議と、すっかり感心してしまった。

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 東京藝大の陳列館の方では、『スーパークローン文化財ってなに?』という企画展をやっていたので、そちらも瞥見。文化財の保護や、失われた文化財を復元するための東京藝大の取り組みが紹介されていて、こちらも興味深く見る。EPSONの巨大なプリンタ、すごいよね、あれ(笑)

NANA MIZUKI LIVE EXPRESS 2019 @ ZOZOマリンスタジアム 9/15

 水樹奈々さんの、今年の夏のライヴツアーの千穐楽、幕張の「ZOZOマリンスタジアム」にやって来ました。この日は初参戦の友人2人が来てくれて、スタジアム前で早速ビールで優勝…


 天気が心配でしたが、気持ちのよい風が吹いています。ライヴ後まで持ってくれればいいんだけど…


 座席は1塁側スタンド。海に向かった外野側にステージが組まれている形です。千葉マリンスタジアムの奈々さんのライヴは、2012年のLIVE UNION以来、7年ぶりです。白と黒の長めのコートのような衣装で、奈々さんが登場。

NANA MIZUKI LIVE EXPRESS 2019

・WHAT YOU WANT
・Poison lily
革命デュアリズム
・What cheer?
・Heartbeat
・《チェリーボーイズコーナー》
・REBELLION
・Naked Soldier
・《企画コーナー》真冬の観覧車
・New Sensation
・Take a chance
・《チームヨーダコーナー》
・SUMMER PIRATES
・HIGH-STEPPER
・Take a shot
・PROTECTION
・《映像コーナー》
・METANOIA
・TESTAMENT
・FINAL COMMANDER
・UNBREAKABLE
・suddenly~巡り合えて~
・Astrogation
・サーチライト


-encore-
・No Limit
・十字架のスプレッド
・Born Free
・POWER GATE


-double encore-
ETERNAL BLAZE

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●このツアー、奈々さん自ら言及していましたが、とにかくバラード曲が、ない(笑)。開始3曲くらいで、すでに汗だくになります。

●「30歳を過ぎてからライヴで歌っていない曲」の企画コーナーは、なんとまさかの『真冬の観覧車』でした。この曲が来ると予想できた人がいただろうか…。夏のライヴで歌う曲ではないでしょ、とは思いますが、まさにそういう理由でどのライヴでもセットリストに入れられなかったということです。たしかに。

●今回、“EXPRESS”というのは運送屋さんというか、歌をお届け!的なニュアンスのテーマだったそうで。映像コーナーは、マイケルという謎外国人のおっさんと奈々さんが運送屋さんをやっているもので、若干オチのわからない感じもあるな、とは神戸の時も思いましたが。。。

●そこから出てきた大物セットは、映像から飛び出してきた巨大なコンボイトラックでした。これ、神戸ではたしか先頭部分しか出てこなかったと思いますが、ここではちゃんと車体全部近く?まで出てきて、電飾がギラギラしているトラック野郎仕様。もはや大笑いしてしまいました。そしてその上に奈々さんとチェリーボーイズが乗って『METANOIA』を歌う、という展開でした。

●他にもこの『METANOIA』では、ARの効果だということでしたが奈々さんを包むように火焔が見えて、うおぉなんだこれ!と驚きました。ライヴの演出というのも時代につれてどんどん進歩しているのですね。

●『Astrogation』のサビでは花火が上がりました。結構本気の花火大会のような花火で、ここで上がるとは思っていなかったのでびっくりしました。背後の空間に何もない海岸の野球場だからこそできる、すばらしい演出でした。

●ラストの『サーチライト』では、「携帯のライトをかざして…」という歌詞になぞらえて、今回のツアーでは、オーディエンスにスマートフォンのライトを点灯させる流れになっています。事前に同行の友人には、スマホはわりとすぐに取り出しやすい場所にしまっておいたほうがよいです、と伝えていたものの、ネタバレ回避的にはそれがアドヴァイスとしては限界でした…(^^; 『サーチライト』は、このツアー随一の佳曲でしたね。

●アンコールでは、フォークリフトを模したトロッコに乗って奈々さんがアリーナを廻りましたが、そのだんだん近づいてくるフォークリフトの運転席にいるのがナネットさんであることに途中で気付いてしまい、それに気づいたが最後、フリフリと身体を揺らしているその鳥が気になって仕方がなくなり、…くっそw あの鳥めwww

●発表が盛りだくさんでした。新譜のリリース、来年の帝劇『ビューティフル』の再演、そして来年のツアーまで発表されました。ツアーの千穐楽に次のツアーが発表されるというのは、珍しい展開です。『ビューティフル』は…あれまたやるのか…よい演目だとは思いますけれど。

●ただやはり、スタジアムの野外ライヴというのはどうしても音響的には厳しいものがあって、音が全部抜けちゃうためだと思いますが、もはやなんだか全然違う曲に聞こえるんですよね。『十字架のスプレッド』なんてこんなにオープンな曲調だったっけ、と戸惑ってしまったほど。

●ダブルアンコールは…千穐楽だもん、当然、求めますよね(^^。実際、客電がつかなかったし。エタブレをやらなかったな、とは思ってたんですよ! 『ETERNAL BLAZE』でした。初参戦の友人たちに最後にこの曲を体験してもらえてよかった(^^

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 20時40分頃には終演していましたが、規制退場の後に、すったもんだありながら人波に流されて、海浜幕張駅に着いたところで1時間くらい経っていました。人が多すぎてどうにもなりません…。傑作だったのは、ライヴ中は持ちこたえていた空から、終演後に澎湃と雨が降り始めたことでした。さすが奈々さん、ライヴ中は神通力で、結界を張ってくれていたようです。

 22時頃から海浜幕張駅前の飲み屋ビルで急ピッチで打ち上げて、23時22分の各駅停車で離脱。これが小田急の終電に間に合う最終接続です。東京駅の京葉ホームから地下鉄の日比谷駅に歩き、千代田線の終電で代々木上原に至って、小田急の最終相模大野行きをつかまえるというルートで、地元まで帰ることができました。